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【修復した壁画をアフガニスタンへ(メス・アイナク出土品保存修復プロジェクト)】

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 東京藝術大学社会連携センター(ユーラシア文化交流センター)では、アフガニスタンのメス・アイナク遺跡出土品保存修復事業を実施しています。当ブログではその修復過程を紹介しています。


 事業の概要は「ユーラシア文化交流センタープロジェクト」をご覧ください。また、修復作業は東京藝術大学文化財保存修復センター準備室にて行われています。


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 アフガニスタン博物館から修復のためにお預かりしたメス・アイナク遺跡出土の壁画2点の修理がおわりました。

 今回の修復は、前回のメス・アイナク出土の壁画修復に引き続き、東京藝術大学の木島隆康名誉教授のご指導のもと行われました。


修復が終わり額装された壁画


 アフガニスタン・イスラム共和国のメス・アイナク遺跡は、3〜7世紀にかけて栄えた仏教都市で、2016年からユネスコにより緊急発掘調査が行われました。

 修復した壁画は、この発掘調査により、メス・アイナクのグル・ハミド遺跡から出土したもので、6〜8世紀ごろのものではないかと考えられるそうです。


 壁面を保護するため、裏返しの状態で保管されていた壁画は、はじめ、何が描かれているかわかりませんでした。


裏返しの状態で保管されていた壁画


 2点のうち小さい壁画(80×74㎝)を表に返し、表面を覆っていた和紙やガーゼなどをはがしたところ、残念ながら、損傷が激しく、絵柄は残っていませんでした。



損傷が激しく絵柄がわからなかった壁画


 一方、大きいほうの壁画(81×162cm)は、これまで修復したメス・アイナク出土の壁画とは異なり、裏面に補強のためのアルミバーが入っていなかったため、エポキシ充填剤などを充填して強化するまで、表に返すことができませんでした。


 また、新型コロナウイルスの感染拡大も、修復に影響しました。

 修復を担当した東京藝術大学の安田真実子さんは、「修復はどうしても人が集まってやらないといけない作業。一人の目で見て判断するよりも、できるだけ多くの人といろいろな意見を出しながらやることが大事」と話します。

 このため、一時、作業を中断した時期もありました。


 なかなか表に返すことのできなかった大きいほうの壁画ですが、表面を養生していた和紙とガーゼをはがすと、供養者の図像があらわれました。

 「和紙やガーゼを少しずつ丁寧にはがしていく作業はすごくどきどきしましたね。どんな絵で、どんな絵具を使っているんだろうと思いました」と安田さん。

 図柄があらわれたときはとても興奮したそうです。



修復前、和紙とガーゼで覆われた壁画表面


 また、修復家として、技術的にワクワクした点をうかがうと、「壁画のエッジ部分」とのこと。

 側面はもろく、オリジナル層周辺に充填剤をしっかりうめて強化することもできるそうですが、あまりうめてしまうと、側面はつるんと平坦な質感になります。壁画の風合いともとの状態を尊重するには、修復は「引き際」が大切と、安田さんは話します。

 長い時を経た文化財は、修復の手の入れ方によって、仕上がりが大きく異なります。修復のさじ加減を見極めるためには、豊富な経験が必要になるそうです。

 エッジ部分も木島隆康先生のご指導のもと、自然な風合いを残すよう修復が行われました。


 修復を終え、額装された壁画は、現地で緊急救出されたばかりのように生々しく、リアルです。また、3人の供養者の図柄は、かつてアフガニスタンで仏教が栄えていた時代を彷彿とさせます。


 今後、2枚の壁画はアフガニスタン博物館へ返却されます。現地で展示される日がくることが楽しみです。